素顔のひとり言

「手相を描く」と云う行為の真実

何人かの方から同じような質問を受けた。「理想的な手相をペンで掌に描くと幸運がやって来ると云うのは本当ですか?」確かに書店に行くと『手相を描く』といった類のタイトル占い本?が何冊も出ている。より詳しく説明すると、自分の手相が「理想的手相」ではなかった場合に、理想とされる運(線)を自らの掌にペンで描くことによって、実際に刻まれていなくても、その線に暗示されている理想的人生がやって来る…と云った内容の主張で展開される手相書なのだ。

もし、これが本当にそうであるなら、こんなに便利で簡単な開運法はない。実は今から40年ほど前、つまり私が手相と云うものをはじめて勉強し始めた子供の頃、まったく同様の発想に立って、私は自らの掌に理想的な線を描いていた。最初は鉛筆やボールペンで描いたのだが、すぐ消えてしまう。何度か試みたが上手くゆかない。そこで何か良い方法はないか…と思案の結果、思いついたのが「実際に線を作ってしまう」ことだった。どうやって作るのかと云うと、ナイフで掌を削って、つまり切り込んで、線を作ろうとしたのだった。子供だった私は、素晴らしい名案だと思った。何しろ、それによって幸運で理想的な人生を手に入れられるのだ。掌に多少の痛みは伴うかもしれないが、その程度の犠牲はどうってことはない。私は慎重にナイフを使って掌に傷を付け始めた。実際にやってみると、掌と云うのはちょっとやそっとのナイフの切り込みでは線とならない。或る程度深く刻み込んでいかないと線にならないのだ。

当然のことながら血が流れて、痛みを伴ったが、そんなことはどうでも良かった。とにかく素晴らしい人生を手に入れるんだ…と必死だった。だから、あまり痛みさえ最初は感じなかったのだ。ところが、深く刻み込み過ぎると、その周辺の色が土色となって汚い感じに変化する。刻み込んだはずの線も、その部分だけ血の色と云うか、傷跡となって醜く盛り上がって来る。本来、掌の線は彫り込まれて低くなっていなければならないのに、逆にその部分だけ盛り上がった線(実際は傷跡)となるのだ。とにかく傷が付いている間、線は汚い赤色(血の色)として盛り上がり、その周辺の色艶も土色となって汚く腫れ上がる。その傷跡が徐々に癒えて来ると、あら不思議、刻み込まれていたはずの線が消えていくのだ。いや、不思議でもなんでもないが、要するにそれだけで、また元通りの掌へと変化していくだけで終わってしまうのだ。

痛みを堪えてまで取り組んだ「理想の手相を描く」一大プロジェクトは、こうして悲惨な結末を迎えたのだった。このような体験をしている私から言わせれば、少年の時の私の無謀な行為を甦らせてくれる本は貴重ではあるが、無意味な本でしかなった。まあ、ナイフでなくペンに止まっている内は、可愛い行為とでも言っておこう。但し、ユメユメそれによって本当に人生が変わるなどとは思わないで欲しい。こう考えたら解りやすいかもしれない。たとえば人相である。化粧品を使って、理想の眉の形を描く。そこまでなら出来る。理想の目の形や大きさを描く。これは難しい。理想の口唇を描く。これもなかなか難しい。まあ、それでも或る程度なら出来ないこともない。理想の鼻や耳の形、さらに顎や額や頬のライン…となると、もう描くだけでは無理で、美容整形医の御出座しとなる。

そういうわけで、手相をペンで描いた場合、次のような弱点があることにも注意が必要だ。まず普段だと掌(手指)と云うのは、意外なほど動かしているもので、描いたままの線を保つというのはなかなかに難しい。ここが顔とは異なる点だ。それに紙や布を持つ時に線がこすれて色落ちする危険がある。寝ている時はどうかと云うに、これもベッドや寝具が汚れること間違いない。要するに、掌にペンで描いた線を、そのままの状態で維持するのは難しいし、維持したとしても気血色の観点からいっても、幸運に結びつくとは云えない。掌は綺麗な方が幸運を掴めるものだからだ。

人相は今後ますます美容外科医によって、変えることが出来る時代へと入っていくが、手相の方はなかなかに難しい。実際には人相を変えれば手相も変化して来るものなので、そのような点からいえば、まず美容外科手術やメイク方法によって、運勢も含めての理想的な顔を目指すことが、手相を変化させる実力行使の魔法なのかもしれない。


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