素顔のひとり言

全世界で加速する格差社会

昭和40年代から50年代にかけて、日本人の8割は自らを「中流」と捉えていた。すべての点で横並びになろうとする風潮が社会全体に蔓延していた。欧米の先進諸国、なかでもアメリカ的生活レベルこそが平均的日本人の一応の目標であった。それに向かって追い付け、追い越せが当時の我が国の共通認識としてあった。良い悪いは別として、そういう時代であった。けれども実際そこに近付いて見ると、必ずしも心から豊かになった実感は得られなかった。さらに国民の生活が横並びになったからと云って、誰もが幸福を実感できるわけでもなかった。当たり前の話だが、経済的な豊かさ=幸せではなかった。「8割の中流」社会は、どこぞの小学校の運動会で実施していたように、みんなが横並びで手をつなぎながら徒競争を行うような味気ない社会でしかなかった。そう気付いた時、日本人は戦後築きあげて来た生活レベルの向上、経済的な横並びによって得られるかに錯覚した理想社会の幻想に夢破れ、茫漠とし、目標を見失い、無言の内にそれからは格差社会を容認するかのような風潮へと突き進んでいった。才能ある者や商売巧みな者が若くして社会的成功を掴む一方で、あくせく働くことを自ら拒否するような若者も多くなった。IT長者が生まれる一方で、短期の派遣で自ら職場を転々とする者も多くなった。当然、収入格差は広がったが、幸せの価値観を「自分らしく…」に求める若者たちにとって、それはどうでもよいことであった。戦後の混乱期に、ひもじい思いをして育った世代には理解できない若者たちの価値観がそこにあった。

若い世代の価値観が変わり始めただけでなく、社会全体の構造も変わり始めていた。戦後定着していた学歴社会が崩壊し、終身雇用制度が崩壊し、家族形態も大きく変貌していた。父親は偉くなくなり、核家族化が進んで、男女間の立場もしだいに逆転しつつあった。同じ価値観を共有させることはもはや不可能となり、それぞれがそれぞれの価値観の中で幸福を追い求める時代へと入った。ところが、このような傾向は日本だけの現象ではなかった。インターネットが普及した結果、世界の若者たちの間に、上から押し付けられる思想や価値観を良しとしない傾向が広がりつつある。これまで日本を手本として経済成長を目指してきた韓国や、中国や、東南アジア諸国でも、成功や出世、収入の豊かさに価値を見出さない若者が増えて来た。日本に見習って「8割が中流」と云える社会を目指したが、どうもそれだけでは幸福は得られないらしい…と気付き始めたようなのだ。もちろん中国などの場合、経済的な格差は都会で働くか、地方に残るか、どの仕事に就くか…といった本質的問題が大きく左右している面もある。東南アジア諸国の場合、学歴や家柄の違いが格差を助長している面も否めない。日本のように価値観主体で経済格差が広がっているわけではない。

今回、私が回ってきた東欧諸国においても、そのような風潮が出始めている…と地元ガイドが伝えていた。このところ経済的な格差が急速に広がっていると云うのだ。確かに、先進諸国としてのフランスやイギリスにおいても、失業率の増加と経済的な格差は深刻な社会問題となりつつある。世界的な経済の失速によって、それまで目立たなかった経済格差のもたらす深刻な事態が国の指導者たちへの批判に向けられつつある。自動車と金融のダブルパンチを食らったアメリカはもっと深刻だ。

経済の落ち込みが、日本の場合、値引き合戦を生み、激安商品を誕生させ、下取り還元セールに拍車をかけ、地球にやさしいエコポイントを促進しつつある。新たな発想や新企画、新商品、各企業間の提携・連帯・吸収合併にもつながり、必ずしもマイナスにばかり作用していない。もしかしたら、これが契機となって、新しい日本の未来像を生み出す原動力になるかもしれないのだ。但し、そこに横並びの発想はない。むしろ逆に、横並びからの脱却こそが、日本経済を活性化させる重要なカギを握ってさえいそうなのだ。

もちろん過去の横並び社会が悪いと云うつもりもなく、経済的な格差の広がりが「横並びの失望」によって助長されたと云うつもりもない。私が注目するのは、世界のさまざまな地域で同時進行のように格差社会が急速に広がりを見せ始めている現実だ。

今、世界№1にもっともこだわりを見せているドバイは、そこで暮らしている人たちを明らかに二分している。富裕層と労働者階級だ。その労働者階級のほとんどは海外からの出稼ぎ組で、日給650円くらいの安い賃金で働く人達が大半だ。一見、セレブの国に見えるドバイは、実はその7割以上の生活者は貧困で、過酷な労働を強いられている。そこに日本から100円ショップでおなじみのダイソーが、ドバイ版100円ショップをオープンさせた。そこに買いに来るのは、何と富裕層の人達が大半だと云うのだ。使い捨てコスメ用品を大量に購入していく。コスメに関しては欧米のブランド製品より、日本の激安製品の方が彼女たちのお気に入りらしい。一時期、ドバイの繁栄も終わったか…に報道されたが実際にはそうでもないらしい。ただ100円ショップで何十万も購入していく人達がいて、その一方で日給650円の人達がいる。この現実は重要だ。全世界で加速していく格差社会は、単に価値観の違いだけでなく、運命と呼ぶ不可思議な力の存在も見せ付けているのだ。


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