素顔のひとり言

占い書籍の問題点

多くの方から、占い書籍の執筆・出版を期待されて、もう何年にもなる。今回は少しだけ言い訳というか、内部事情のようなものについて書いておきたい。

私の場合、間違っても人マネをするような形で著述することはない。自分自身の言葉や書き方で、過去の実占鑑定やデータを踏まえながら、読者にも理解できるようなものとして書いていく。それが「波木星龍の本」だと捉えている。ところが、そういう意図の元に占術書を書こうとすると、いろいろな部分で問題が噴出する。まず第一に、書籍というものには企画出版というものと自費出版というものがある。企画出版とは解かり易く言うと出版社がその製作費を受け持ってくれる形の出版形態で、多くの大手出版社はこの形を取っている。製作費だけでなく、宣伝費も持ってくれるので当然売れる確率が高い。逆な言い方をすると、売れそうなものでなければ企画出版の形を取らない。一方、自費出版の方は著者本人が製作費を負担するもので立派な本や図解多数の本にしようと思えば思うほど製作費が掛る。もちろん発行部数も企画出版と自費出版とでは相当に異なる。自費出版というのは余程話題にでもならないと広く流通しないように出来ているのだ。

そういう事情があるので、私としては出版する以上、本当はどこの書店にも置かれる書籍としたい。ところが、そのためには何よりも“解かり易いこと”“読み易いこと”“売れる本であること”が絶対条件となる。そうでないものは、土台が出版社を巻き込むことが出来ない。つまり、企画出版にならない。早い話が、理論的にも技術的にも実用書として、専門的に見て優れている占術書というのは元々あまり売れそうもない書籍内容となってしまうのである。昔から実占家が永年の研究やデータを網羅して著述した占術書はベストセラーになったためしがない。別にベストセラーに等ならなくても良いが、今は「出版不況」と言われて、売れそうもないものは大体が自費出版に回される。もちろん、望むような本が出来上がるのなら自費出版でも良いのだが、最初にも述べたように多数の図版・図表を含む本は、一般の自費出版専門の所は完全原稿として提出しないと中々OKを出さない。例えば手相の本を書く時、私のように図版が300枚とか入る場合、その図版と文字とがきちんと組み合わされた原稿なら受け入れるが、そうでなくてばらばらに提出した場合は途方もない金額が製作費として要求される。それでいて細かな間違いが生じやすい。これは元々自費出版というのは企画出版と違って優秀な編集者を付けないからである。つまり、大手出版社の場合には最初から企画編集するスタッフがいて、ページ割や図版配置等を決め、それに合わせた文字数の文章だけ著者が記述すれば良いように出来ている。これなら書く方も楽だし、見栄えも良く、読者にも解かり易い。占術書だけでなく、近年の実用書というのはそういう形式でまとめられたものが多い。もちろん、大手出版社の場合、製作費もかけるからカバーデザインだって多色刷りとか、派手なイラストとか、文字の強弱・大小・縦横とか自由自在だ。そういう諸々の作業を含めて最初から“売れるような体裁”に仕上げてあるのが企画出版なのだ。

そういう訳で、占術書の自費出版は様々な点で不利であり、良い本に仕上げるのは難しいのである。私は過去に手相の本を自費出版しているが、この時には精密な図版を280枚描くだけで1年以上掛った。正直、今、あの時のようなエネルギーはない。あの時のような細密な図解を280枚描けと言われても無理なのだ。しかも、あの時は文字もすべて自分で書いた。つまり活字を使わない“製図ペンを用いた手書きの本”なのだ。考えてみると、4ミリ四方の細かな升目を一文字一文字埋めていくのは大変な作業だった。それでも、手相書を技術書と捉えていた私は、精密な図解でなければ決して初心者が手相書からすべての掌線を理解することは出来ない―という信念を持っていた。もちろん、事情が許すなら、もう一度手相書を執筆する機会が与えられて欲しいが、多少角度を変えた企画本として上梓したいものだ。自費出版とするなら最初から専門技術書として、日本ではこれまで書かれたことが無いような内容のものとしたい。かつて占星学書として出版した『占星学秘密教本』は魔女の家BOOK社からの企画本だが、これは「自由に書いて良い」と言われて、思い切った内容で書かせてもらった珍しい本だ。この出版社が元々占術書専門の出版社だったからこそ可能になった話だ。この本でもホロスコープの実例を220枚以上入れさせてもらったが、後にも先にもこのように多数の実例を入れた占星学書は他にない。日本でも海外でも存在していないのだ。実際に調べてみると解かるが、どんな占術書でも実例図解をたくさん載せると製作費が高くつき、ページ数も増え、資料収集で制作時間もかかる。一般的にいえば占術書で実例が沢山載っているといっても数十例載せれば関の山で、実際に夥しいデータがなければ載せたくても載せられるものではない。ところが、実際に占いの本でベストセラーとなるのは、当たり前だがそういう小難しい本ではない。ほとんど実占経験が乏しそうな人物の書いた本が多く、いわゆる“初心者用の入門書”なのだ。そうしなければ、多くの読者を獲得することは出来ない。もちろん、入門書の執筆であってもかまわないが、実はこれまでの入門書には間違いが多い。ただ、それを是正しようとすると専門的な角度からの説明が必要となって、広く浸透している一般的な俗説を否定するところから出発しなければならない。いくら入門書だといっても、明かにおかしいことやデータ的に否定される事実を無視して記述することは出来ない。そういった諸々の問題があって、私でなくてもかけるオーソドックスな入門書の執筆には今一つ乗り気になれないのだ。

そうはいっても、私ももう先が長くないかもしれず、これまでの研究の一端は何らかの形で後世に遺しておくことが使命だとも思える。残念ながら私と共通する実証データや研究成果を、私の著書以外で市販書では見かけることがないからである。今後、どういう形になるか解からないが、徐々に形として著わしていくつもりなので気長に待ってもらえたならありがたい。


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