素顔のひとり言

天駆ける龍

マカオで“三つの龍”に出逢った。

その一つは私が宿泊したグランドリスボアのロビーでガラスケース内に鎮座していた“3メートルほどの黄金の龍”であった。このホテルは、同じ系列のリスボアホテル同様たくさんのお宝を展示している。マカオのホテルはカジノで潤っているせいか、どのホテルも豪勢な造りだが、特にこのホテルは外見も内装も華やかで贅沢な造りを感じさせる。したがって“黄金の龍”も、そういうホテルのロビーにあっては特別に目立つ存在とは言えない。ホテルの外観は“巨大な玉葱型” とでもいおうか、日本でならパチンコ屋以外に考えられない電飾が躍っている。実質的にはフロント部分が小さく宿泊客に対する対応もあまり親切とは言えない。ただ、部屋自体は間違いなく豪華で、落ち着いた色調で、広々としていて、ジャグジーも付いていて申し分ない。飲み物が無料なのも良い。これまでいろいろなホテルに泊まったが、あんなに部屋の扉が分厚いのを見たことが無い。5~6㎝の厚みがあるドアなのだ。もちろん重い。子供の力だと部屋を開けられないかもしれない。大きな声を出しても、室外に漏れる心配はない。殺人計画にはもってこいの“危険な部屋”なのだ。実は、このホテルの後で香港のインターコンチネンタル香港に泊まった。このホテルも香港を代表するホテルの一つだが、正直グランドリスボアに3泊した後では“豪華なホテル”とは感じられなかった。 “凡庸な古びたホテル”にさえ感じた。しかも、このホテルの方が1万円も高いのだ。もちろん、ジャグジーもなく、部屋も狭く、ベッドも小さく、冷蔵庫の飲み物は有料だ。プールからの景色も素晴らしいと書かれたガイドブックもあったが、これまた凡庸で特別お勧めは出来るほどのものではない。要するに湾岸に一番近く“眺望だけが売り”のホテルなのだ。出歩くのもやや不便で、そういう点でもグランドリスボアとは比べ物にならない。

出歩くといえば、マカオも香港もいたるところにホテルがあって、特にマカオではよくこれだけ多数のホテルが次々と建造されていて、共存していけるものだと感心させられた。それだけカジノが盛況であることの証拠とも言えるが、その7割方は中国本土からの客達のようだ。食事やカジノやショーの観覧の為にウィンマカオやMGMグランドホテルやグランドハイアットマカオにも行ったが、どのホテルも豪華で華やかで“お宝”が展示されている。いわゆる“写真映え”の良いホテルばかりなのだ。ウィンマカオの円形ロビーで行われている“吉祥樹”と“富貴龍”のショーは有名らしく、その時間になると続々とホテル外から人が集まって来る。何故なのか解からないが“吉祥樹”の方が超満員の人だかりだった。9万8千ともいわれる“黄金の葉”が付いた巨木が地下から競り上がって来るショーで、中国人達からは大きな歓声が上がり背中向きに小銭を投げ入れる人達が多い。“トレビの泉”を思い起こさせる光景だ。その30分後に今度は“富貴龍”のショーが行われる。こちらの方が日本人にとっては興味深く新鮮に映る。雷鳴が轟く中、地面が割れ、スモークの中から“黄金の龍”が競り上がって来るのだ。しかも龍の高さは8メートル以上に及び、赤い眼を光らせ、鼻から煙を吐き出し、天上に炎が揺らめき、無尽に乱舞し続ける。作り物とは思えない迫力なのだ。こちらの方が思わず手を合わせたくなる威容に満ちている。

これらのショーは、別に宿泊客でなくても共に無料で楽しむことが出来る。太っ腹なのだ。実はもっと太っ腹なのが、シティー・オブ・ドリームスの中で行われる「ドラゴンズ・トレジャー」というドーム内の天幕映像ショーだ。無料だが入場整理券を必要とするショーで、それだけ人気の呼びものなのだ。最初、私はあまり期待していなかった。実は特別なドームの中で行なうと思わなかったし、天幕映像と思わなかったし、長時間映像とも思わなかった。何しろ無料なのだ。もっと単純で子供っぽいものと想像していた。ところがこれが大違いだった。ハリウッドの最新技術を駆使しているだけに、その映像も、音楽も、光りも、正しく幻想的で丁度映画「アバター」から人類を取り除いたような構成とでも云おうか…。とにかく、天空を駆けまわる龍の動きの素早さはUFOの動きを追っているような錯覚すら覚える。今回の観光の中で最も感動を与えてくれたものとなった。

それにしても、マカオも香港も今回で3回目だが、それぞれが新しい観光の眼玉を用意し、発展中の勢いを感じさせた。特にマカオは中国本土からのカジノ収入が豊富なせいか、続々とハリウッド資本が投下されている。豪華なホテルの割に安く泊まれるのも魅力だ。我が“星龍”にも、マカオの爪の垢ほどの勢いがあれば、もう少し無料で“占いファン”を楽しませることが可能なのだが…。


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