私は時々、何が正しいのか、わからなくなることがある。「サンタクロースの正体」に関しては、今もそうだ。私は幼い頃、サンタクロースの“存在”を信じ切っていた。だから、いつもクリスマスが近づくと、サンタクロースさんに“願い事”を書いて靴下に忍ばせ、それを吊るしていた。母親は時々「じゃあ、サンタクロースさんにお願いしてみようか」といっていたからだ。そして指折り数えて眠ったが、なぜかサンタクロースさんは私の願いを聞き入れてはくれなかった。「ちゃんと書いたのになぁ」不満そうな私の顔を視て、母親は辛そうな顔をしていた。それでも母親は、私の枕元に、必ず“サンタクロースのプレゼント”を置いた。それはささやかなもので、決して私の“望んだもの”ではなかったのだが、それでも一応、毎年、サンタクロースはやって来た。私は、いつ頃「真実」を知ったのだろう。9歳前後だったような気がする。だから大人になった時、自分の子供の“願い事”は極力叶えてあげようと誓ったものだ。そして、そうしていたのだが、娘が9歳になった時、私は前妻と離婚した。その離婚の時に、私はどうしても子供に話しておかなければ…と思うことがあった。私は娘とふたりきりになって「サンタクロースの正体」を話した。そうしないと、毎年、娘に向けて書いていた「サンタクロースさんからのお便り」が無くなって、哀しい想いをするに違いないからだ。枕元に“プレゼントを置く”ことは出来ても、“なりきりの手紙”は書かないだろうことを察知していたからだ。娘は身じろぎもせず黙ったまま聞いていた。今年、アメリカのトランプ大統領は“サンタクロースの質問”をしてきた7歳の少女に対し「まだサンタクロースを信じているのか」と揶揄して、多くの大人たちから批判された。日本のワイドショーでも、コメンテーターとして出ていた奥山佳恵氏が「父親がサンタクロースだった」と明かし、幼い児と一緒に見ていた人たちから批判された。こうして、子供たちは或る日突然“夢の世界”から放り出される。スペインでは18年間にわたってカトリック教会の司祭として勤めていた人物が、実は司祭としての資格を持たず偽造書類であったことが発覚し、18年間に及ぶ“贖罪を許す秘跡”は無効である旨が信徒たちに通知された。神は“罪を許していなかった”というのだ。それにしても、偽りの司祭ミゲル・イバラ氏は自らの罪をどういう形で償うのだろうか。
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