監視体制の甘さが“仮想通貨流出事件”を招いたように、何となく“おかしい”と気付きながらも、それを放置しておくと大変な事態を招くことは歴史が教えるところである。監視体制の甘さという点で言うと、日銀や政府の「円高」への“警戒感”があまりにも乏しい。今年に入ってドル円相場は、急激に“円高方向”へと進んでいるのに、日銀も日本政府もマスコミも、その点にあまり触れようとしない。それは“日経平均”が、多少は下落気味でも“暴落”というところまで行っていないからである。けれども、それは違うのだ。実は、その間にアメリカの「ダウ」や「ナスダック」の株価が急騰している。ざっくりと言えば、ダウは年初24800ドルだったのが、現在は26600ドルまで1800ドルも値上がりしているのだ。一方の「日経平均」はどうかというと、年初23506円だったのが、現在は23631円となっていて、わずか125円しか上がっていない。「ドル」と「円」の単位違いはあるが、年初時点では“1300”しか違わなかった価格が、現在は“3000”もの差がついてしまっている。輸出企業の多い「日本株」は世界の“景気敏感株”と言われ、世界景気の動向と連動する。世界の景気を牽引する“アメリカ経済”が右肩上がりで好調なのに、それを反映して「ダウ」が“最高値”を連日更新し続けているのに、それに連動しないのはおかしいのだ。そんなことは解かっているはずなのに、誰も“奇妙だ”と騒がない。その根本原因は“為替動向”にある。ここにきて急速に“円高方向”へと向かっていることが、輸出企業の多い「日本株」の上昇を許さないのだ。“ドル円相場”の動向は、数ヶ月経ってからでないと実体経済に反映しないようになっている。だから、輸出産業も今のところはあまり騒がない。確かに、日本株は今のところ、大きく下がっているわけではない。けれども、それは「ダウ」が急騰し続けているからである。もし、今後「ダウ」が下がりだしたらどうなるか、瞬く間に「日本株」は急落するだろう。しかも、その場合、ドル円相場にも歯止めが掛からなくなる。一気に「円高」が進んで“ダブルパンチ”を食らう可能性もあるのだ。歯止めをかけるなら“今”しかないのだ。“仮想通貨流出事件”は、われわれに海外からの資金でいっせいに「日本株」が“売り叩かれる”可能性があることを強く警告している。
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