時々思うのだ。「幸運の女神に後ろ髪はない」というのは本当なのだろうかと…。第一「幸運の女神」そのものに、ついぞ出逢った記憶がない。きっと「女神」というくらいだから“麗しい”に違いないが、街を歩いていても、それらしい人には一向に出逢わない。だが考えてみると「後ろ髪がない」っていうのは、なかなか奇妙ではないか。というか、ちょっと“妖しい”。それに第一、後ろ髪がないから「通り過ぎる手前で捕まえろ!」という意味なのだが、仮に“麗しい人”が来たとして、それを横切る手前で本当に“捕まえて”良いものだろうか。もしかすると、捕まえたとたん往復ビンタを食らうのではないか。或いは“セクハラ”で裁判沙汰となるのではないか。いや絶対そうなるだろう。昔の人の「教え」というのは、これだから困る。いや、仮に“捕まえた”として、そのあと、どうすればよいのだ。「今日は良いお天気ですね」とでもさりげなく言うのか。「だから、何なのよ」と返されて終わりではないのか。そうではなくて「もしかしたら、幸運の女神では…」と訊くべきなのだろうか。「そう思いになられるのなら後ろに回ってみれば?」と告げられて、後ろに回ってみたとする。やっぱり、後ろ髪がない。幸運の女神と確信をして掴もうとするが、そう、後ろ髪がないのだ。だから、すたすたと先に進んでいって、結局、捕まえられないって、この話、やばくねぇ。
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