今年で68回目を迎えたNHK紅白歌合戦。その“初出場組”のお披露目があった。その中で、一人だけ和装で現れたのが演歌で初出場となる「丘みどり」であった。と言っても、正直、私はこの人の歌をきちんと聴いたことがない。聴いたことはないが、こういう人こそ、紅白歌合戦にはふさわしい。正直なところ、私は最近の演歌の低迷は、演歌というより歌謡曲全体の低迷は、“作り手側”の完全な勘違いから来ていると思っている。まず、歌謡曲をあまりにジャンルに分けしすぎである。例えば“演歌”なら“演歌”とはこういうものという“押し付け”が感じられる。“ロック”なら“ロック”とはこういうものという押し付けが感じられる。“アイドル”がこれだけ乱立しているのに、そこから抜け出していく“本当のアイドル”が出てこない。それは、作り手側が“アイドル”とはこういうものと勝手に決めつけ、そういうものに“枠”をはめて、本来の“みんなが自然に歌いたくなるような歌”を作ろうという意識が乏しいからである。元々、日本の歌唱はそういう“自然さ”の中で培われ、支持されてきたものである。日本に“演歌”が生まれたのは、“演歌のような人生”を歩んでいる人たちがたくさんいたからだ。ところが、最近の“演歌”は、明らかに“作り物の世界”に陥っている。そこには実際の生活がない。だから、そんな歌に共感できるわけがない。戦後、日本の復興に“演歌”は大きな役割を果たした。それは、実際の生活と歌謡曲の内容とが見事に歩調を合わせていたからだ。その大切な部分を、なぜ今の作り手は“引き出そう”とはしないのだろうか。特に“演歌”の作り手は、なぜ“時代物”などというおかしな楽曲を演歌などと勘違いしているのだろうか。或いは、現実とは“遊離した世界”を得々と歌うように指導するのだろうか。或る意味で、美輪明宏の「ヨイトマケの歌」は、あの時代における演歌だった。だから、久しぶりに“紅白らしさ”が出た選曲となった。けれども、毎回あれでは逆に“もういい”ということになる。いくらでも良い曲は過去にある。だが、本当は今の世相に相応しい歌謡曲が一番良いのだ。今年に“相応しい曲”が歌われるのが一番良いのだ。年の終わりに、誰もが“今年”を感じ取れるような曲が良い。もう、誰もがそう思って共有できる“歌謡曲”が無くなって久しい。安室奈美恵さんは確かに“素晴らしい歌手”だが、引退しようとする歌手を無理やりステージにあげるのはやめた方が良い。それでは“来年の展望”が抱けない。どうしてそれが解からないのだろう。
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