【80年前に掲載された実例手型】

手相を実際に研究する場合、実例を基として研究するのが一番良いのですが、今現在を生きている方の場合は、個人情報的な意味合いもあって、なかなか全面的に公開出来ません。そこで、すでに故人となっている外国の著名人の実例手型を基に解説をすることにいたしました。主要な履歴も付け加え、特徴のある部分のみの手相解説にとどめ、読者自身がデータ的に活用して研究できるよう配慮しています。

【実例5=H・ゴードン・セルフリッジ】

H・ゴードン・セルフリッジ手相1
H・ゴードン・セルフリッジ手相2

【主要な履歴】

  • 1856年1月11日生まれ。英国の実業家・百貨店王。
  • アメリカの貧しい母子家庭で育ち、10歳から新聞配達などで家計を助ける。
  • 14歳から銀行下働きや家具工場の帳簿係など経験。手腕を買われシカゴ最大の商店の支配人となる。
  • 34歳で財産家の娘と結婚。その後、妻と観光で訪れたロンドンで企業を起すヒントを掴む。
  • 1909年3月、ロンドンのオックスフォード街に高級百貨店・セルフリッジズを開業。
  • 掲載時は従業員4000名を超えていた。「リーダー」として数々の名言を遺す。
  • 夫人は1918年に死去。子供4人。ヨット、旅行、読書の趣味を持つ。
  • 晩年は財産を失い困窮となって不遇のまま死去した。

【手相の解説】

まず手相全体として、縦の上昇線が多く、文字通り「上昇志向」の強い人物であったことが窺われます。 また比較的小指が長く、世の中の動きに敏感で、商取引に優れた素質を持っていることが窺われます。運命線、太陽線、水星線、木星線と、四指に向かう縦の線がいずれも複数クッキリ刻まれている大変稀な手相です。このような手相の人物には、日本では「松下電器」の創業者として一時代を築いた松下幸之助氏や「江崎グリコ」の創業者だった江崎利一氏、海外では英国の政治家グラッド・ストーン氏などがいます。 いずれも志が高く、不屈の精神を持ち、常に社会貢献も忘れなかった人物です。しかも、彼らが創業した企業は、今もなお形を変えて生き続けています。 「百貨店王」と異名をとったセルフリッジ氏の場合、その著書に遺した名言は今も「リーダーの鏡」として賞賛されています。そして「セルフリッジズ」という名を遺した百貨店は現在でも営業し100周年を迎えています。 彼の三大線の中で特徴が際立つのは頭脳線です。長く掌を直線的に横切る線(a-c)が主要線ですが、それとは別に、掌を下降する平均的頭脳線(a-d)もあり、明らかに掌中央部で二分しています。この「分岐型」頭脳線は成功者に多く見掛けるもので、掌を直線的に横切る実行力や困難な現実への対応能力と、掌を緩やかに下降する豊富な発想力や穏やかで協調性に富む性質が見事に調和し、ビジネスマンとして理想的な素質・能力を生み出しています。よく、この頭脳線を「二重頭脳線」と記している手相家がいますが、この頭脳線は「分岐頭脳線」で、起点が別々で平行する二重線ではありません。私の経験では、二重線よりも分岐線の方が社会的な適応能力が高いものです。 また感情線と頭脳線との間にできる空間である「火星四角形」が、頭脳線が分岐することで事実上は二種類の形状となり、直線的な頭脳線が長いことで「火星四角形」そのものも長くなって、推理・分析能力の発達を促すことになります。また下降頭脳線の方で作られる「火星四角形」は中央部が狭く両端が広くなる形状となり、ロマンチストで情愛豊かな人の相となります。これら二つの能力や性質を上手く使い分けることで、人間性豊かで状況判断も巧みな人物像が誕生することになります。 日本の実業家の場合、太陽線(l-m)や水星線(e-n)が何本も刻まれている例は少なくないのですが、木星線(o)が3本も刻まれているケースは滅多にありません。これは向上心の強さと社会的な権威を物語る相で、何本も刻まれる人は「試験に強い」という特徴もあります。おそらく趣味的な面でも種々の資格・技術を習得していたはずで、成功後も勉強を怠らなかったことでしょう。 ただ運命線(j-k)や太陽線は、土星丘や太陽丘の中央部分から急に力強さを失い、短い小線数本に分散してしまっています。これが晩年の悲劇を物語る予兆かもしれません。ただ水星線は4本ともクッキリとし、少なくともこの手型時点の手相では、その晩年を予見するのは困難です。生命線(a-b)には、太陰丘から大きな弧を描く太陰環(f-g)が通過していて、アルコールなどの刺激や幻想を追い求めやすい傾向が暗示され、健康面や私生活上でも何かしらの問題を抱えていたのかもしれません。