ときどき私には「理解不能」としか言いようのない出来事が“芸能界”では起こる。例えば過日亡くなった芸能事務所社長・ジャニー喜多川氏に対して、その所属していたタレントたち、要するに男性社員たちなのだが、その男性社員たちの奇妙なまでの“追悼メッセージ”の数々だ。確かに、社長の「死」は突然であったかもしれない。確かに、社長一代で今日の“芸能王国”を築き上げたのかもしれない。その功績は誰もが認める。但し、彼はもう87歳であり、普通ならもう“第一線”から退いても良い年齢である。けれども、彼は倒れる直前まで仕事をし続けていた。もちろん、それは立派なことではあるが、同時にそれは“脆弱な企業組織”であることの証明でもある。一企業としてみた場合、創業から現在まで、一人の人物だけに頼ったことは組織としてあまり褒められたことではない。ここ数年、社長自身がそれを意識したかのように“後継組織作り”を進めていたようにも思えるが、まだ完成していなかった。おそらく当面の後継者は藤島ジュリー氏なのだろうが、女性で“男性社員ばかりの組織”を上手く束ねられるか疑問の余地もある。ただ、そういうことを除けば、社長個人として、こんなに社員たちから熱烈に支持されてきたことは幸福なことでもある。但し、男性社員の誰もが、まるで予期せぬ事故で逝ってしまった恋人に当てたような“追悼メッセージ”を載せるのは、いかがなものだろう。例えば40歳となる堂本剛氏は《この世の中にある すべての言葉と想いで綴っても 僕の胸の中は伝えることが出来ないよ あなたが命尽きるまでの 最後の最期まで (中略) いつまでも抱きしめて生きていくよ (中略) 愛しているよ ありがとう 宇宙一大好きだよ》う~む、追悼のメッセージって、こんなに熱烈なものだったっけ。もちろん、87歳の社長は尊敬すべき人だったのだろう。それは理解できるのだが、普通、40歳の男性社員が亡くなった87歳の社長に向かって「宇宙一大好きだよ」とか、言うかな。百歩譲って仮にそう思っていたとしても、それを公共の「追悼メッセージ」として載せるだろうか。どうも、その辺のところが私には理解不能なのだ。もしかするとこれは、所属している男性社員たちの誰よりも、自分と社長とは“愛し愛された関係”にあったという同僚たちへの強烈なアピールではないのか。
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