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vol.6 大アルカナ「6」=恋人 |

大アルカナの「6」に指定されているのが、一般に「恋人」と呼ばれているカードです。このカードは、一般のタロット解釈では、旧約聖書のアダムとイヴの姿を描いたものとして理解されているのが普通です。ただ、欧米の魔法結社として知られるゴールデンドーンによる解釈では、ギリシャ神話に由来した図柄を描いて、アンドロメダ王女と英雄ペルセウスのふたりを「恋人」として捉えているようです。さて、エジプト系タロットでは、どう扱うべきなのでしょうか。これまで、エジプトの神々を取り入れてきていた「カラシマ・タロット」にも、「恋人たち」とあるだけで、エジプトの神々は採用されていません。
実は、ここに並べた4枚のカードのすべてが、この「恋人」の図柄に関しては、正しい解釈に基づいて描かれていません。旧約聖書の多くの部分が、古代エジプトの神話伝承に由来していることに気付かなかったからです。旧約聖書『創世記』において、神は「光あれ」の言葉で最初に光を創り、その後、天地創造のすべてを5日で行い、6日目に自分に似せて人間の男女を創造した、と記されています。人間の男女を創るとき、神は土から男(アダム)を創り、男の骨から女(イヴ)を創った、と記されています。
古代エジプトの神話伝承は、旧約聖書のように単一なものではありません。さまざまな地域に、さまざまな伝承が存在するからです。ヘリオポリスでは、最初の創造神は「アトゥム」で、彼が独力で男女の神を産み出すのですが、エドフでは、光の神「ウル」の存在が最初にあり、エレファンテーネでは、羊の創造神「クヌム」が、ろくろを使って土から人間を創った、とされていました。メンフィスでは、言語の神「プタハ」の舌によって、すべてのものは産み出された、とされていました。つまり、これら各地域の神話伝承をひとまとめにしたのが『創世記』なのです。ヘブライ語原典による『創世記』では、神を「ヤハウェ」と表記することと、「エロヒム」と表記することとがあります。後者は、本来「神=エル」の複数形で、直訳すると「神々」となって、神は唯一絶対の存在でなく、複数いたことを暗示している、と考えるのが妥当です。
エジプトでは、一応ヘリオポリス神学が一番有名ですが、アトゥムによって最初に創りだされたのは、大気の男神「シュー」と湿気の女神「テフヌト」で、この男女神から、大地の男神「ゲブ」と天空の女神「ヌート」が創られ、この男女神から「オシリス」と「イシス」という原初古代エジプト王が誕生した、とされているのです。これらから考えると、ここで「恋人」として扱われている二人のカップルは、古代エジプトのホルス王を産み育てていく系譜である「シュー」と「テフヌト」、「ゲブ」と「ヌート」、「オシリス」と「イシス」、すべてを同時に表そうとしたもの、と見るのが妥当と考えられるのです。そういう意味では、「トート・タロット」に描かれている二重、三重のカップルは、ある意味で真実を捉えている、ともいえるでしょう。ただし、天使を描いているのは明らかに筋違いで、もしも、ここに翼あるものを描くのであれば、古代エジプトで王の頭上を舞う神「ベヘデティ」か、または翼の生えた太陽円盤の神「ラー・ハラクティー」か、どちらかがふさわしいと思われます。
実占的な意味合いとしての「恋人」のカードには、神によって与えられた縁、という意味が加わらなければなりません。単なる愛によって結ばれたカップルというだけでなく、宿命的な結びつきと、成すべき事を与えられて結ばれた二人であることに気付かなければならないのです。 |

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