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vol.9 大アルカナ「9」=隠者(世捨て人) |

大アルカナカードで「9」に指定されているのが、一般に「隠者」の名称で知られているカードです。エジプト系カードにおいては、「カラシマ・タロット」ではトト神が当てはめられ、「アンセント・タロット」でも隠者の足元にヒヒが描かれ、トト神であることが暗示されています。けれども、これは隠者の持っている知性的な性質を、そのように見立てただけであって、エジプト学の真意に至っているとは思われません。
ここで重要なのは、隠者がランプを持った闇の導き手として描かれている、という点なのです。又、「トート・タロット」や「アンセント・タロット」のように素顔を隠した老人の姿で描かれている、という点なのです。
「隠者」のカードは、カバラ(秘教)的解釈ではヘブライ語の「ヨッド」が当てはめられ、それは原意としては「手指」を意味しています。西洋占星学でも、「ヨッド」と呼ばれるアスペクトはあり、3つの惑星が、150度・150度・60度で繋がったときに成立します。特殊な先天的才能ある人のホロスコープに見出される、とされていますが、実際には時折見出されるアスペクトで、特別というほど珍しいものではありません。ただ、「神の指先」を連想させる「ヨッド」という言葉を当てはめたのは、特殊な才能による指導力のような作用が、秘められたアスペクトと感受されたからなのかもしれません。
タロットの「隠者」においても、「神の指先」のような先導能力が、このカードに与えられていることは事実です。一説によれば、このカードは、タロット・スプレッドの「古代ケルト十字法」のカード配布の方法を、図柄の中で暗示しているとされ、ランプが左側のカード配置を、杖が右側のカード配置を、それぞれ暗示しているというのです。これは、実際にカードを並べて説明しないと理解しにくいかもしれません。
ヘブライ語の「ヨッド」には、カバラ的には、もう一つの重要な役割があります。それは「ヨッド」が、神の秘密の名を表わす綴りとして用いられる、という点です。すなわち「ヨッド・ヘー・ヴァウ・ヘー」とヘブライ語で綴られる四文字で、これを秘教学的には「聖四文字(テトラグラマトン)」と言います。英語で「ヤーウェー」とか「エホヴァ」とか呼ばれているものです。古代エジプト伝承では、魔女イシスが、年老いた「ラー」に対して、「あなたの本当の名、隠された秘密の名称をお教えください」と、迫る場面が伝えられています。それに対してラーは「朝はケプリ、昼はラー、夜はアトゥムと呼ばれる者である」と答えるのですが、イシスは納得せず、再度、秘密の名を白状するように迫った、と伝えられています。
この伝承は重要で、同一の太陽神でありながら、朝日は「ケプリ」、昼間は「ラー」、夕日は「アトゥム」と表現していた、ということです。創造神でもあるアトゥムは、朝日ではなく夕日の方だ、という点です。実際、「アトゥム」というヒエログリフは、象形では「橇」が描かれていて、これは冥界の闇の中を、一晩中進んでいくための「蛇形の橇」を意味しているのです。つまりは地平線下の太陽を暗示しているのがアトゥム神なのです。そして、「隠者」のカードに相応しい神もまたアトゥム神なのです。時として老人の姿で表現される神であるアトゥムは、死後生命の導き手として、冥界の闇の中を太陽として照らして行くのです。
死後生命を確信していた古代エジプト人たちは、『死者の書』を遺しました。この広く知られている書物の正式名称は『日の下に出現することの諸章』で、これは明らかに地平線下に太陽が下降していくこと、逆な言い方をすれば、冥界に太陽が出現していくこと、を表わしているものと思われます。したがって、このカードには、先祖達の知恵をないがしろにしてはならないこと、地平線下の太陽は、やがて又、朝日として出現することが確実であるので、永遠の隠者ではないこと、夜間の間に知恵を磨くべきであること、第一線からは遠ざかった方が真理に近づき得ること、などを暗示しているカードとして理解しなければなりません。 |

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