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タロットの秘密 Vol.12大アルカナ「12」=吊るし人

4種類のタロットカード

12 THE HANGED MAN (吊るし人)
アンセント・タロット:12 吊るし人 ネフェタリー・タロット:12 吊るし人 ト―ト・タロット:12 吊るし人 カラシマ・タロット:12 吊るし人
アンセント・タロット ネフェタリー・タロット ト―ト・タロット カラシマ・タロット


四枚のカードのうちの三枚までが、文字通り「吊るされた男」を描いています。そして、その図柄も基本的にはほぼ同一で、片足首に綱が巻かれて吊り下げられている姿です。ところが、ただ一枚ネフェルタリー・タロットだけが、特殊な図柄となっているのが印象的です。実は、これは古代エジプトのレリーフとして実在する奉納用化粧版の図柄なのです。それも第1王朝の創設者で、上下エジプト王国を統一したとされているナルメル王の勇姿なのです。もちろん、敵を跪かせて、こん棒を振りかざしているのがナルメルで、その頭上のホルス神(象形ハヤブサ)はヒエログリフで下エジプト地域を制圧した、と記しているようです。記録によれば、このときの捕虜は12万名とも示されています。
この化粧版の後、続々と歴代の諸王たちは、自らの勇姿をこの様式(敵を跪かせ、王の半分に描く手法)のレリーフとして描きました。ギザの大ピラミッドの建造者と伝えられるクフ王も、同じような勇姿をシナイ半島ワディー・マガラの壁面に刻んでいます。ただし、このときの王名は「クフ王」としてではなく「クヌムクフ王」と記されています。この王名は、ピラミッド内「重量拡散の間」として知られる天井裏にも見られたもので、エジプト学上でも同一王の異称として受け入れられているものです。ワディー・マガラの壁面でも、父親であるスネフル王のすぐ近くに描かれているのが印象的です。そこから衰退が始まったのか、古王国時代の王でシナイ半島に遠征したのは、クヌムクフ王が最後のようです。
観光地としてのエジプトは、栄華な王朝が続いていったように映りがちですが、実際には内外における戦争・侵略・王位争奪の歴史でもあります。したがって、捕虜として捕えられていた人物も相当数いたはずで、それらをどう扱っていたかは興味深い問題です。一説によれば、種々の拷問や断罪の仕方があったとされ、逆さ吊りの刑もその一つでした。ちなみに、古代エジプトの彫像やレリーフではしばしば鼻が欠け落ちていますが、これは鼻を削ぎ落とす刑が存在していたからです。
このように記すと残忍な民族のように思うかもしれませんが、そうとも云えません。中国の殷王朝では、捕虜たちを、刑場に焚火を起こし、油を塗った鉄棒の上で綱渡りをさせ、渡り切った者のみ生かして置く、と云うようなことをしています。日本の幕府も隠れキリシタンに対して、首から下を土中に埋めて、その広場を馬にまたがった武士たちが何度も往来する、と云うような刑を科したりしています。
そのような観点から考えれば、逆さ吊りの刑など、まだ良い方なのかもしれません。やがて、奴隷として生き残っていく希望があるからです。そして、その希望こそ、まさにこのカードの実占的解釈の重要な決め手と云えるものです。つまり、今現在は身動きできなくても、やがて生き延びていく可能性が示唆される、と判断できるのです。このカードに対して、オーソドックスなカード解釈では、キリスト教的な「殉教者」のイメージでとらえるケースも多いようですが、本来イエスの十字架刑と同一視することはできません。
タロットカードでは、しばしばヘブライ文字との適応が記されていることがあります。魔術結社ゴールデン・ドーンの創設者であったメイザース解釈によれば、このカードに適応するヘブライ文字は「ラメド」であり、それは「棍棒」や「ムチ」を意味しています。まさにこのカードの原意に相応しい文字の当て嵌め方と云えるでしょう。




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