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Vol.14大アルカナ「14」=節制 |

この「節制」のカードに対して、オーソドックスなタロット教科書がどのようなことを書いているか興味があったので調べてみました。ゴールデン・ドーンの解説書では「天使が二つのカップを手にして、神の酒を入れ替えている。物事の均衡、バランスを象徴している(中略)火のような情熱と水のような優しさが中和され、一つの完成した生活を生み出している」と記されています。メイザースの教科書でも「天使が一方の壺から一方の壺へと水を移し替えている。一つのものの他のものへの応用、或いは二つのものの融合を表している」と記されています。アーサー・ウエイトの教科書では「二つの杯の間で生命素を移し替えながら、片方の足は大地に、もう片方は水中に入れることで生命と云うものの本質を説明している」と記されています。いずれもやや抽象的すぎて解かりにくく難しい解説に終始しています。
ここに並べたエジプト系四枚のカードでも、天使または女神と思われる女性が、壺、或いはカップで水を移し替えているかのような図柄ばかりです。しかも、それは水辺において行われています。より厳密に云えば、アンセント・カードとカラシマ・カードでは「ネフティス女神」として描かれ、ネフェルタリー・タロットでは「マアト女神」として描かれているようです。また、トート・カードでは特定の女神となっていません。マアトに関してはすでに出て来ていますので、ネフティスに関して説明しておくと、イシス女神の妹とされ、主としてイシスの助手的役割を果たす女神のようです。
私自身は、古代エジプトの神々の中でもっともこのカードを象徴しているのは「ハピ神」以外は考えられない、と思っています。ハピ神と云うのは、ナイル河の水量を調節する源流神と一般的には捉えられています。つまり、アスワンをナイルの注ぎ口と考えた古代エジプト人が、その注ぎ口の神によって、増水→氾濫→排水などの調節が行われているものと捉えたのです。「ハピ」神のレリーフは、両手の壺からナイルに水を注いでいる片立ち膝姿で、今もアスワンの洞窟に残されています。一般的にはこの洞窟レリーフが有名なのですが、それ以外でも上エジプトと下エジプトの統一を表すレリーフに、「統一」の文字を挟んで左右に向かい合った立ち姿で登場するケースもあります。そういう意味では、必ずしもナイル河の水の調節だけを意味する神でもなさそうです。
ただ、そのことでいっそう「節制」と云うカードの図柄と、この神の表す役割とが一致してくるのです。つまり、ナイル河の水量の調節と、二つのものを統一する役割が、同時に与えられていることで、最初に示したオーソドックスなカード解釈も、逆にナルホドと合点がいくのです。これほどオーソドックスなカード解釈が現実的な形で、古代エジプトの神の役割と見事に符合する例はありません。しかも、エジプト系カードの図柄でさえも、その神が登場していないのです。それは多分「ハピ」と云う地方神が、同じエジプト神々の中でもマイナーな神に属するからでしょう。余程エジプト文明に精通していなければ「節制」と「ハピ神」とをイコールで結び付けられなかったのかもしれません。
けれども、このカードの図柄にエジプト系カードでなくても壺が登場したり、川が流れていたりすることを考えれば、カードの図柄自体は不思議なくらい見事に伝承され続けて来ていた、とも云えるでしょう。
実占的には、飲食、金銭、仕事、肉体など、あらゆる面で調節や節制を必要とすることで信号機の役割を果たしているカードと云えるでしょう。また、肉体と精神、感情と意志、職場と家庭、上司と部下など、上手く融和させていく必要のあるものが運勢のカギを握っていることを表しているカードとして注目すべきです。
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